2008-02-16

礼服の上着が違う!

「この礼服の上着、主人のではないんです!」 とか…
「間違って、別の人の礼服を渡されたんですけど…」

 というようなお申し出をお客さんから平均、年に2,3回頂くことがあります。

 (またか…)

 と思いつつも、お話をお伺いすると「着ようと思ったら大きすぎる」「小さすぎる」「サイズは一緒だけれど、ズボンと色合いが違う」「風合いが違う」というお話から始まり、場合によっては「これからすぐ出かけなければならないのだけど、どうしてくれるんだ!」とか「とりあえず夏用を着ていくけど、責任はとってくれるのか!」とか「間に合わないのでこれを着ていくが、後で自分のものを取り行くのでいいですよね!」などと言われます。

 電話では埒があきませんし、詳細も分からないので、お手数ですが、後日、品物をご持参の上ご来店くださるようにお願いします。と同時に必ずお願いするのが「品物についているタグ」を捨てないで必ず一緒に持ってきてくださいということです。

 後日、品物をお持込いただいたお客様と品物を拝見させて頂きながら、お話をさせてもらいます。
 礼服の上着の裏にはまずネームが入ってますのでそれを確認します。お客様と同じ苗字です。けれど、実際に「上着とズボン」は違っています
 一見、同じように見えても品質表示票などでサイズを確認すると上下でサイズが違ったり、またメーカー自体が違うこともありますので、確認は簡単です。

 「ねっ、違うでしょ!同じ苗字で同じ黒だから間違いやすいのは分かるけど…」
 ますます、お客さんの鼻息が荒くなります。

 次にクリーニングに出した時期を確認します。礼服は着なければ、一年くらい、袖を通さないこともあるので実にやっかいです。会員のお客様であれば、レジの記録ですぐに分かりますが、そうでなくても「タグ番号」を台帳で参照すれば、数年前でも分かります。

 「10月13日の午後3:15にお預かりしておりますね」
 記録も残っており、間違いなくお預かりしています。タグ番号も間違っていません。

 「すぐに確認しなかった私も悪いかもしれないけど、明らかにお宅のミスでしょ!こういうの、どう責任とってくれるの?」

 お客様のそんなお言葉を聞きながら、台帳で前後に「礼服」を出されたお客様がいないか一応確認します。ありません。

 (またか…)

 内心、深いため息をつきながらも、確信します!
 そして、ここからがポイントです。
 まず、礼服の上着はこのお客さんのものではないことは紛れもない事実です。けれど、その上着は、その日にそのお客様がクリーニングに出したものであるということも間違いない事実なのです。

 意味分かりますか?

 要するに「クリーニングに出す前に既に上着が別の人のものになっている」のです。
 鋭い人はピン!ときたかもしれません。

 結婚式や法事などではついアルコールが入ります。そして二次会にでもなり、ネクタイを解き、上着を脱いでお父さんは「グビグビ」とやっちゃう訳です。で、帰る段になって「じゃ、お疲れさま!」とか赤ら顔でいい、そのままお隣の方の上着を持ってきちゃったり、着てきちゃったりするわけです。けれど、酔っているので分かりません。
 千鳥足で家に帰ってきても、すぐにそれを脱ぎ散らかしてバタンキュー。
 で、翌日、「お父さんったら、あぁあ、こんなに汚して…」と言いながら、それを丸めて奥さんがクリーニングに出しに来るという典型的なパターンなのです。また、結婚式や法事なので隣の人が同じ苗字の親族というところもミソです。
 (家に帰ってみたら靴が片方違っていたというよくあるパターンの礼服バージョンなわけです)

 ただ、これをお客さんに理解していただくのが、実に骨が折れます。
 一般的にクリーニング店では「品物」と「」と「(客の)名前」で区別していると大半のお客さんが思ってますので、それらが一緒だから間違ったのだと決め付けるように思い込んでますし、なにより、そんな作り話のような話は責任転嫁の話としか受け取ってもらえないのです。
 (んなもの万の単位である品物が区別できるわけないだろ!)

 けれど、くりまんじゅうの会社では受け付けた品物はお客さんごとにネットに入れて封をしてしまい、タグをつける段階になるまでその封が開かれることはありません。従って、タグ番号が間違っていなければ、100%近く、そうなのです。(100%でないのは、例えば、洗濯中に偶然2点の礼服のタグが取れてしまい、それを間違って付け換えてしまったという非常にレアなケースも可能性としては残されてますので、100%と断言は出来ません)

 根気良く、様々な可能性をお客様にお話します。
 勿論、クリーニング店で間違ったケースを中心にです。けれど、その中に上記のたぶん「原因」であろうことも一緒に加えてお話します。そして、工場内はもとより全店をすぐに探させることをお約束します。と同時に「正しい品物が見つかることがベストであり、その為にあらゆる可能性を是非一緒に考えさせてください」ということもお伝えします。

 クリーニングに出された前に着たのはいつだったのか?
 息子さんと一緒に出席してなかったか?(実際、親子で上下の組み合わせ間違いというのもよくある話です)
 二次会などに出席し、その時、隣に座っていた人は誰だったのか?

 こちらが真剣にお話をすると、最初は疑っていたお客様も次第にその可能性もあるような気がし始めます。こうなれば、しめたものです。

 そして、話をちゃんと受け止めてもらえたお客様からは、大抵数日後に、「一緒に出席した親戚に電話して礼服を確認してもらったら、ありました。ごめんなさい。お手数を掛けて本当にすいませんでした。本当にお父さんったら…」というような嬉しいお電話を頂けます。
 中には「ご面倒をお掛けしました」と菓子折りなど持ってきてくださるお客様もいらっしゃいます。
 けれど、信じていただけないお客様の上着は永遠に出てきません。その場合、残念ですが補償なども出来ません。

 それが現実です。

 ということで、皆さんも「礼服」をクリーニングに出す際はくれぐれも気をつけて下さい。

 ※ただ、本当はクリーニング店で渡し間違ったのに、それでも「嘘」をついて責任逃れをする業者も中にはいるので、それも同時に気をつけなくてはいけません。

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 ちなみに、お店では受付時に「ネーム」の確認をするようにしています。苗字が違った場合は、その場でお尋ねするのですが、まあ、大抵の場合は「あっ、それ人様から頂いたものなので…」とか嫌な顔をされるので、それはそれで困りものなのですが…

1 件のコメント:

  1. 礼服だからこそ起きやすいトラブルですね・・・
    自分(お客様)は間違っていないと思い込んでいるので、それを失礼にならないよう解き明かし、気持ちよく理解してもらうのは至難の技ですね。

    でも、我が家でも起こりそう~!! 

    法事などで、上着は脱がないよう主人には言っておきま~す(笑笑)

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