2009-09-10

富岡巡り 富岡製糸場No3

 (富岡巡り 富岡製糸場No2からの続きです…)

 一度、場内の正面入り口でもある「東繭倉庫」に戻りました。

 そのまま外に出て、長さ約105mある東繭倉庫の建物に沿って歩いていきます。

 しかし、大きな煉瓦造りの建築物です。

 維新直後の明治5年ですから、レンガなど当然、国内で流通しているはずはありません。
 ここで使用されているレンガは、日本の瓦職人が東隣町の甘楽町(福島)に集められ、そこで窯を築いて、「富岡製糸場」の為に焼き上げたものだそうです。
 また、目地にはコンクリートがないので、その代わりにこれまた西隣の下仁田で採取された石灰で作った漆喰が使われているそうです。

 ちなみにレンガの積み方は日本では珍しい「フランス積み」。
 この辺りも建築指導者がフランス人、ポール・ブリュナである所以なのでしょう。

 午前中は薄曇でしたが徐々にその雲も晴れ、空から日差しが差し込み、気温もぐんぐんと上昇していきました。

 続いて…見学先は「繰糸場」です。

 同じく明治5年建築です。
 この繰糸場は、明治5年から操業を停止する昭和62年まで115年間、生糸を生産していました。

 内部は壁面の窓が大きく、照明が無くとも結構明るいです。
 その窓はやはりフランス製で、採光の為に限りなく大きく沢山取り付けたそうです。

 奥に入っていくと、説明員の方が大勢の人を引き連れて説明してました。
 およそ一時間ごとの定期的な時間で、個人見学の人に場内の各場所を解説してくれます。勿論、自由希望ですので無料です。(解説案内時間は約一時間程度らしいです…)

 創業当初はフランス製の繰糸器が300台設置され、その規模は当時世界最大のものだったと言います。

 ここで働く女工さんたちは、全国から募集したそうです。

 しかし、富岡製糸場は明治政府の殖産興業政策の一環として、製糸業の近代化を目指したものでしたので、集められた女工さんは単に「労働力」と言うよりも、ここで製糸術を学び、伝習を終えた工女さんは各々その出身地へ戻り、そこで器械製糸の指導者とする為だったそうです。

 信州松代の士族の娘、和田(旧姓横田)英さんの『富岡日記』という日記が群馬県立歴史博物館に残っているそうです。

 そこにはこう書かれています。

 -富岡御製糸場の御門前に参りました時は、実に夢かと思ひます程驚きました。生まれまして煉瓦造りの建物など、稀に、錦絵位で見るばかり、それを目前に見まする事でありますから、無理もなき事かと存じます。-

 明治5年、政府は富岡製糸場で働く工女の募集を行いましたが、「異人に生き血をしぼりとられる」という噂が広まり、中々人が集まらなかったそうです。
 そこで、各府県に人数を割り当てて募集し、主に士族の娘などが集められたといいます。

 とりあえず、富岡製糸場の地図もアップしておきます。

 次なる見学地は「ブリューナ館」です。

 富岡製糸場を作るにあたり、明治政府は外国人指導者としてフランス人のポール・ブリューナを雇いました。
 ブリューナは建設地を富岡に選定し、フランスから製糸場に必要となる技術者を連れてきたり、洋式の器械を日本人の体格に合うように改良したものを注文して取り寄せたそうです。(ちみなみに、設計は横須賀製鉄所建設に携わった同じくフランス人のオーギュスト・バスチャンが担当したそうです。)

 そのブリューナがメイドさんと共に明治8年末の任期満了まで生活していたのが「ブリューナー館」です。
 広さ約320坪、他の建築物と同じく木骨レンガ造平屋建ての住宅です。

 ブリューナ館の突き当たりは崖でありその下に鏑川が流れています。
 工場排水はここから流されていたそうです。

 ここで見学は行き止まりになります。

 Uターンしてきて、女工館…
 当初は外国人技術者、後に女工さんたちが住んでいた建物だそうです。

 繰糸場、東・西繭倉庫、 女工館(外国人宿舎)、検査人館、ブリューナ館等の主要建物は国指定重要文化財であり、操業当初の頃のままの状態で良好に保存されています。

 およそ、一時間ほど掛けて数十年ぶりに富岡製糸場を見学してきました。
 そして、歴史的価値のある素晴らしい建造物であることは改めて認識しました。

 さて、現在、地元(富岡市と群馬県及び7市町村)では「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界文化遺産登録を目指して様々な活動を行っています。
 現時点は「世界遺産暫定リストへの記載」の段階だそうです。

 富岡製糸場が世界遺産に登録されることは、経済的にも観光的にも落ち込み続ける西群馬の田舎町の大いなる活性化にもなるでしょうし、なにより、オラが街の、オラが群馬の宝として、くりまんじゅうもとっても嬉しいことです。
 地元ですので、沢山の知り合いがその登録推進に汗を流していることも知っていますし、これを見ていてくださる方の中にもひょっとしたら、活動を続けていらっしゃる方がおられるかもしれません。
 是非、頑張ってもらいたいものです。

 ただ、改めて「富岡製糸場」を見学し終えて…ふと思ったことがあります。
 それは…
 もし富岡製糸が世界遺産に登録されたら、果たして自分は遠方にいる知人や友人に「世界遺産を見に群馬においでよ!」と胸を張って言えるだろうか…?
 と言うことです。


 いや、この拙いブログを見てくださっている群馬を知らない方々に…
 文字サイズラージにして

 「世界遺産を是非見に来てください!絶対後悔させません!」

 とこれを見る為だけに群馬にお呼びできるだろうか…と…

 正直に言えば、自信が無いです。しかも全然・・・(^^;

 現在、日本には14箇所が世界遺産に登録されています。

 ・法隆寺地域の仏教建造物
 ・姫路城
 ・白神山地
 ・屋久島
 ・古都京都の文化財
 ・白川郷・五箇山の合掌造り集落
 ・広島平和記念碑(原爆ドーム)
 ・厳島神社
 ・古都奈良の文化財
 ・日光の社寺
 ・琉球王国のグスクおよび関連遺産群
 ・紀伊山地の霊場と参詣道
 ・知床
 ・石見銀山遺跡とその文化的景観


 これまた正直言ってしまえば、最後の一つを除けば(^^;、どれも皆、押しも押されぬ日本を代表する場所です。 (石見銀山遺跡の関係者すみませんm(_ _)m)

 いや、ここに並んでしまって果たしてホントにいいのだろうか…(^^;
 なんか、とっても恥ずかしい気がするのはくりまんじゅうだけでしょうか…(^^;

 些細な個人的な感情を優先するか、深い愛郷心を優先するか…
 富岡製糸場を後にして、なんだかとっても考え込んでしまいました。
 あぁ、難しい問題です。

 (これ書きながら実はまだ考えています^^;)

 ということで、「富岡巡り 富岡製糸場」編、以上です。

 < Nikon D700 + Ai AF Nikkor 35-70mmF2.8D >

 ところで、「あーめん、そーめん、ひやそーめん」って何の呪文でしたっけ?(笑)

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